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同じ作者なのに酷い?『未来日記』と『ビッグオーダー』を比較してみた


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2016年4月から1クール放送されたTVアニメ『ビッグオーダー』。 月刊少年エースにて連載中のコミックスを原作とする本作ですが、その作者は『未来日記』で知られる漫画家の"えすのサカエ"先生。今やえすのサカエ先生の代名詞とも言える『未来日記』は、TVアニメ化で人気に火が付き、その後すぐに岡田将生さん主演でドラマ化もなされたほどの大ヒット作となりました。しかし、今回のTVアニメ『ビッグオーダー』はどうも様子が異なります。

そこで今回は、同じく"えすのサカエ"先生原作のTVアニメ『ビッグオーダー』と『未来日記』を比較し、両作の違いと共通点を洗い出してみたいと思います。

『未来日記』と『ビッグオーダー』の比較

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まずは制作に関わった方々と原作を含めて、『未来日記』と『ビッグオーダー』を比較してみます。

制作スタッフの比較

  未来日記  ビッグオーダー 
原作 えすのサカエ えすのサカエ
監督 細田直人 鎌仲史陽
シリーズ構成 高山カツヒコ 高山カツヒコ
脚本

高山カツヒコ、小鹿りえ、

佐藤勝一

高山カツヒコ
キャラクターデザイン 平山英嗣 小島智加
音楽 加藤達也 Evan Call
アニメーション制作 アスリード アスリード

両作の制作陣はこのようになっています。この表で共通しているのは、原作・シリーズ構成・脚本(高山カツヒコさんのみ)・アニメーション制作の4つで、それ以外は異なりますね。特に大きな違いと言えそうなのが、『未来日記』では3人いた脚本担当が、『ビッグオーダー』では高山カツヒコさんお一人になっている点でしょう。

原作スペックの比較

  未来日記  ビッグオーダー 
原作者 えすのサカエ えすのサカエ
掲載誌 月刊少年エース 月刊少年エース
既刊 本編全12巻、外伝全3巻 既刊9巻
累計発行部数 約400万部 約80万部

簡単ではありますが、『未来日記』と『ビッグオーダー』の原作スペックを表にまとめました。

まずは『未来日記』から。累計発行部数は、本編12巻と外伝3巻を含め約400万部を超えていると公表されています。*1 掲載誌は、「月刊少年エース」。

次に『ビッグオーダー』。累計発行部数は、コミックス8巻までで約80万部と公表されています。*2 掲載誌は、『未来日記』と同じく「月刊少年エース」です。

『未来日記』と『ビッグオーダー』の違い

評判の違い

『未来日記』と『ビッグオーダー』。良作とも、原作者が"えすのサカエ"先生であることはもとより、作品自体の雰囲気も非常に似ており、何かと比較されることは仕方がないでしょう。とはいえ、『ビッグオーダー』の評価は『未来日記』よりも明らかに低くなっています。

テンポの悪さ

私自身も感じたように、『ビッグオーダー』のクオリティは大ヒット作の『未来日記』に比べると著しく低いと言わざるを得ません。その具体的な指摘の一つが、異常なまでの「説明口調」です。

そもそもアニメに限らず、映像作品のキモは「テンポ」。このテンポの致命的な欠落が、『ビッグオーダー』の「ギャグアニメ」感、もっと厳しく言えば「クソアニメ」感を引き立てているのは言うまでもありません。

テンポの悪さの原因は「ムルムル」?

これは私個人の分析ですが、これは物語としての説明役、『未来日記』で言うところの「ムルムル」の存在がカギなのではないかと思います。

未来日記 Blu-ray通常版 第9巻

そもそも、『未来日記』では"ゲームマスター"のような存在として、サバイバルゲームを主宰する「時空王」側のキャラクターが存在します。そして、時空王デウスの「使い」として物語に大きく関わってくるのが、小柄な女の子の姿をした悪魔「ムルムル」です。プレイヤー同士の裏切りを促したり好き勝手に動くキャラクターですが、テンポ良く物語を展開させていくためには非常に効果的なキャラクターでした。"ゲーム"としての性質上、ムルムルたち主催者側が主人公・雪輝たちプレイヤー側にルール等を説明をしても何の違和感もありませんし、むしろ世界観の説得力が増します。

一方、『ビッグオーダー』では難しい世界観を視聴者に説明するための「説明役」がほぼ不在の状態です。敢えて挙げるならば、星型の瞳をした少女「DAISY(デイジー)」がこれに近いでしょうが、まだ謎も多く活躍の場は意味深な「次回予告」ぐらいのものです。

『未来日記』と『ビッグオーダー』の共通点

"ヤンデレヒロイン"の存在

ブシロードスリーブコレクションHG (ハイグレード) Vol.249 未来日記 『我妻由乃』

『未来日記』のヒロインといえば、病的なまでに主人公の雪輝に愛を捧げるピンク髪の美少女・我妻由乃(がさい ゆの)です。

対して、『ビッグオーダー』に登場するヤンデレヒロインといえば、紅鈴(くれない りん)。主人公のエイジを親の敵として猛烈に恨みながらも、一緒に行動することを余儀なくされ、次第に少しずつ心惹かれていきます。基本的な性格は我妻由乃と大きく異なりますが、髪型や髪色など重なる部分も多いですね。

特徴的な表情

アニメーション制作会社が、良作とも「アスリード」であるという点も大いに関係があるでしょうが、それを別にしてもキャラクターの表情を描写する作画の特徴が良く似通っています。

OP主題歌を歌うのは

『未来日記』と『ビッグオーダー』の雰囲気が似ていると感じる大きな要因の一つが、OP主題歌を歌うアーティストです。両作ともにOPを歌うのは、Lantis所属のヘヴィメタルユニット「妖精帝國」。

『未来日記』第1クールOP「空想メソロギヰ」

『ビッグオーダー』OP「DISORDER」

両作共に「世界の命運」を懸けた重苦しい物語だけに、妖精帝國の重量感たっぷりの楽曲が特に印象に残りますね。

公式HP・SNSアカウントが同じ?

twitter.com

作品の内容が似ているといった問題以前に、SNSアカウントが共有であるという事実。さらに、番組HPに至っては、ドメインが「future dialy」(未来日記)のままになっています。わざわざ一緒にしているので何か意図があるのかもしれませんが、正直に言うとこれは手抜きにしか思えませんね。

【ビッグオーダー】オフィシャルサイト

まとめ

以上、『未来日記』と『ビッグオーダー』を比較し、その共通点と違いについて考察してきました。私自身は『未来日記』がとても好きで、今回の『ビッグオーダー』も放送前から非常に期待していたのですが、フタを開けてみると「なんでこんなことに……」という内容でした。

ただし、この記事で私が伝えたかったことは『ビッグオーダー』に対する「批判」ではありません。今回一番悲しかったのは、『ビッグオーダー』という作品が良くも悪くも、あまり話題に挙がってこないことです。もしもこの記事がきっかけで『ビッグオーダー』に興味を持ち、原作を含めてこの作品に触れる方が今以上に増えれば、私もこの記事を書いた甲斐があったのだなと実感できるはずです。

 

『ビッグオーダー』の原作コミックスはこちらから