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『甲鉄城のカバネリ』と『進撃の巨人』はどこが似てる?比較してみえた両作の違い


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現在好評放送中のTVアニメ『甲鉄城のカバネリ』。近代化の進む世界に突如として現われた不死の怪物"カバネ"と闘う日ノ本(ひのもと)を舞台にした本作ですが、何かと比較されることが多いのが、2013年に放送されたあの大ヒットTVアニメ『進撃の巨人』です。両作ともに監督を務めるのは、TVアニメ版『DEATH NOTE』や『ギルティクラウン』などで知られる荒木哲郎さん。そのほか、『進撃の巨人』のスタッフの多くが『甲鉄城のカバネリ』に参加しています。

そこでこの記事では、『甲鉄城のカバネリ』と『進撃の巨人』のどこが似ているのか?を比較・考察し、両作の違いについて整理してみたいと思います。

『甲鉄城のカバネリ』と『進撃の巨人』はどこが似ているのか?

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ネット上でも、既に『甲鉄城のカバネリ』と『進撃の巨人』が似ているのでは?という話題が多く挙がっています。その盛り上がり様は、「進撃のカバネリ」なんていう言葉も出てきているほどです(笑)

とは言うものの、「どこが似ているのか?」という点においては、意外と多くの方が漠然としたイメージのみで留まっている印象ですね。

スタッフの比較

  甲鉄城のカバネリ 進撃の巨人
監督 荒木哲郎 荒木哲郎
シリーズ構成 大河内一楼 小林靖子
脚本 大河内一楼、瀬古浩司 小林靖子、瀬古浩司、高木登
キャラクターデザイン 美樹本晴彦(原案)、江原康之 浅野恭司
音楽 澤野弘之 澤野弘之
アニメーション制作 WIT STUDIO WIT STUDIO、Production I.G(協力)

まずは制作陣の比較から。監督の荒木哲郎さんをはじめ、脚本の瀬古浩司さんや音楽の澤野弘之さん、アニメーション制作のWIT STUDIOというように共通するスタッフが多いことがわかります。

キャストの比較

  甲鉄城のカバネリ 進撃の巨人
主人公 畠中祐(生駒) 梶裕貴(エレン・イェーガー)
ヒロイン 千本木彩花(無名) 石川由依(ミカサ・アッカーマン)
親友 梶裕貴(逞生) 井上麻里奈(アルミン・アルレルト)
上司 増田俊樹(来栖) 神谷浩史(リヴァイ・アッカーマン)
仲間 内田真礼(四方川 菖蒲) 小林ゆう(サシャ・ブラウス)
逢坂良太(巣刈) 三上枝織(クリスタ・レンズ)
沖佳苗(鰍) 細谷佳正(ライナー・ブラウン)

制作スタッフに比べると主要キャストはがらっと異なりますね。

ただ、両作ともに唯一主要キャストに選ばれているのが、逞生(たくみ)役とエレン役を演じる梶裕貴さん。進撃では「駆逐してやる!!!」とか言ってたのに、カバネリではデブ扱いなのがちょっと面白いですね(笑)しかしながら、『甲鉄城のカバネリ』の逞生は最新第6話では大きな活躍を見せましたし、今後の活躍にも期待したいキャラクターの一人です。

共通する世界観

ひとつめのキーワードは、やはり"絶望"でしょう。

両作は共に、人類が得体の知れない敵の脅威にさらされている世界を描いており、独特な"閉塞感"を表現しています。また、人類がその強大な敵に対する効果的な対応策を持たない時代という点も共通しており、これが全体を通した雰囲気を似通わせている理由なのでしょう。

もうひとつのキーワードは、"スチームパンク"。

スチームパンクとは、産業革命前後の現実世界を基盤(モチーフ)とし、そこにSF要素やファンタジー要素を加えて独自の技術体系や社会を形成した物語、SF作品のサブジャンルのひとつです。

『進撃の巨人』の方は厳密な意味でのスチームパンクではないものの、衣装や道具などデザインからは同様の時代背景を感じます。両作は共に現代ほどの技術水準にはありませんが、『進撃の巨人』では立体機動装置、『甲鉄城のカバネリ』では駿城(はやしろ)といった、独自の技術を開発・運用しています。

敵の力を持った主人公

『甲鉄城のカバネリ』と『進撃の巨人』の大きな共通点の一つとして、主人公の能力の問題が挙げられます。

生駒とエレンは、窮地に立たされた人類の中で数少ない「敵に抗う大きな術」を持った存在になります。そして興味深いことに、2人の力は敵の力をうまく活用したものなのです。生駒はカバネの力を取り込んだ"カバネリ"として、エレンは巨人と対等以上に戦うことができる"巨人化"を駆使して活躍していきます。

最強のヒロイン 

『甲鉄城のカバネリ』と『進撃の巨人』の共通点の一つとして、「ヒロインの戦闘能力の高さ」という点も挙げることができるでしょう。

『甲鉄城のカバネリ』のヒロインである無名(むめい)という少女は、生駒と同じカバネリ。短時間ながら驚異的な戦闘能力を誇り、ほんの数十秒の間に一人で数十体以上のカバネを難なく倒すほどの力があります。一方、『進撃の巨人』のヒロイン・ミカサも同様に驚異的な戦闘能力を持っており、作中では「1人で100人の平凡な兵士に匹敵する」と称されるほどです。

『甲鉄城のカバネリ』と『進撃の巨人』の違いとは?

それでは、『甲鉄城のカバネリ』と『進撃の巨人』を比較して見えてきた両作の違いについても整理していきましょう。

原作の違い

まずはもっとも基本的な所ですが、原作のあり・なしの違い。皆さんご存知のように『進撃の巨人』は別冊少年マガジンに連載中のコミックスを原作としています。

対して、今回の『甲鉄城のカバネリ』は、WIT STUDIOによるオリジナルアニメ作品。誰もこの先の展開を知らないという中で、物語における山場の作り方にも注目していきたいですね。

主人公のモチベーションの違い

生駒「カバネを倒すために、俺の命はあるんだ!!!

 

エレン「駆逐してやるっ!!……一匹残らずっ!!!

生駒とエレン、両作の主人公は共通点も多いですが、根本的な行動の指針が違うように感じます。その違いは、2人の印象的な台詞からもうかがえますね。

エレンが戦う理由は、母親を殺されたことに対する「復讐心」。対して、生駒の戦う理由は「自分の存在意義」。幼い頃、自分の妹を救えなかった自分に対する悔しさとの戦いに他なりません。

逃げる怖さ

『甲鉄城のカバネリ』が『進撃の巨人』と大きく異なるポイントは、"逃げる怖さ"があるという点です。

『進撃の巨人』の場合、人々は基本的に壁の中に籠って生活しています。「とりあえず壁の中にいれば安心だ」という認識が人類にはあり、あくまでそこに帰って来れるという前提で、エレンが所属することになる「調査兵団」もこれを前提に壁外遠征に出ることになります。つまり、『進撃の巨人』におけるエレンたち調査兵団の戦いは、あくまで「ホーム」がある中での「アウェー」での戦いだと位置づけることが可能です。

対して、『甲鉄城のカバネリ』では『進撃の巨人』における壁に近いものとして「駅」がありますが、この駅は常にカバネの脅威にさらされており、作中でも頻繁に駅が壊滅したという情報が入ってきます。要するに、『甲鉄城のカバネリ』における生駒たちの戦いは、絶対的な「ホーム」がない状態における常に「アウェー」な状態での戦いだと位置づけられます。

仲間が敵になる

また、『甲鉄城のカバネリ』は『進撃の巨人』と異なり、仲間が「敵になってしまう」という恐怖をはらんでいます。

『進撃の巨人』の場合は、敵の巨人に食われた仲間はそこで絶命するわけですが、『甲鉄城のカバネリ』はそうはいきません。だからこそ、仲間同士で「お前もカバネじゃないのか!??」と擬人暗鬼になったり、「自決袋」などというものが欠かせないものになるわけです。

もし自分にとって親しい人間が"カバネ"になってしまったら、躊躇なくそれを倒せるのか? まさに物語の核心にも触れてきそうなテーマですね。

仲間の死

さらに、『甲鉄城のカバネリ』では『進撃の巨人』よりも「仲間の死」が描かれにくい傾向があるように思えます。もちろん今後増えていく可能性は大いにありますが、この点においては『進撃の巨人』よりも視聴者に優しい設計になっていると言えるかもしれません。

まとめ

このように共通点も多い『甲鉄城のカバネリ』と『進撃の巨人』ですが、改めて比較してみると異なる点も意外と多いことがわかりました。『甲鉄城のカバネリ』はまだまだ物語中盤。今後の展開に注目していきたいですね。

 

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