キャッチコピーは盛り盛りに
今週のお題「盛り」
「盛り」というお題を見て、書籍編集者のときに感じた「表周りのキャッチコピー」について書いてみたいと思います。
「これだと説明的過ぎてつまらないな」
これは、僕が書籍編集者としてよく先輩方にフィードバックされた言葉です。
何に対してのフィードバックかというと、書籍の表周りにある「キャッチコピー」です。
我々編集者は書籍を作るさまざまな工程に関わりますが、比較的後ろの工程でやるのが装丁デザインです。(なかには企画の段階で表周りのコピーを決めているというツワモノ編集者の方もいます)
装丁を作る際には、編集者がデザインの方向性を決めることに加えて、表周りに使うコピー案を作らなければなりません。じつはこれが中々に大変な仕事なんです。
なぜなら、編集者はそこまで著者さんの執筆に伴走してきた人間なので、原稿の内容については著者さんの次に詳しい人間になっています。
だからこそ、「その本のことを全く知らない誰か」のために必要なコピーを作るのは至難の業なのです。
ここで見出しの話に戻ります。
コピー案を作るときは本当に無数の案を出してその中から吟味していくわけですが、ある程度自分の中で案を絞ってから他の編集者の先輩方にそれを見せても、大抵すんなり通ることはありません。
なぜなら、たとえ本の内容に則してはいたとしても、「面白そうだ」と思えないからです。
書籍の要約・説明ではダメ、少し大げさに言う
さて、どうするか?
結局は担当編集者からみても、多少「盛る」ことが必要になってきます。
もちろん、内容とあまりにも違うことを言うわけにはいきません。読者を裏切ることになりますし、著者にも当然反対されます。
とはいえ、つらつらと前提や申し送り事項を書くわけにもいきません。
ですから、少なくとも何かについて「言い切る」必要が出てきます。
〜かもね?というスタンスの本があるとしたら、たとえそれが誠実な対応だったとしても、なかなかお金を出して買おうとは思えないですよね。
コピーの「盛り」は文脈次第
わかりにくい話なので、1つ例を出してみようと思います。が、余計にわかりづらいかもしれません。
たとえば、
「チャットGPTは優しさが9割」
と言われたらどう感じますか?
「いや、そんなことないだろう」
とか
「え?なにそれ?どういうこと?」
と思うかもしれません。
この場合、両者ともに自分の認識とコピーに「差分」が生まれています。
だからその差分を埋めたくなる。それが、「読みたい」につながるわけですね。
では、この「チャットGPTは優しさが9割」の部分ですが、その背後にはあらゆる文脈が想定できますね。
ですから、この時点で一概に正しいとも間違っているとも言えない状態なのです。
たとえば、
「こんなAIを発明できるなんてチャットGPTはほとんど開発者の愛(優しさ)で出来ているようなものだ」
とか
「チャットGPTはなるべく優しい言葉を返すように学習されているので、その回答のほとんどは優しい口調である」
といった具合でしょうか?
もしこういう趣旨の本のタイトルが「チャットGPTは優しさが9割」だったとすると、まあちょっと言いすぎな気もするけど間違っているわけでもない。という絶妙な感じになるわけです。
なので、コピーの「盛り」は割りと文脈次第なのかもね?というダメな結論でした。
※例が良くなかったのかも。気が向いたら書き直します。